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最高裁判所第二小法廷 平成5年(行ツ)179号 判決

埼玉県大宮市大字水判土二一番地の三

上告人

寿流日舞詩舞の会

右代表者

鈴木文次

右訴訟代理人弁護士

高澤正治

古閑孝

札幌市厚別区厚別南二丁目一四番二八号

被上告人

菊池照子

右当事者間の東京高等裁判所平成四年(行ケ)第一三二号、第一三三号、第一三四号審決取消請求事件について、同裁判所が平成五年七月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高澤正治、同古閑孝の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき、若しくは原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 根岸重治 裁判官 中島敏次郎 裁判官 大西勝也)

(平成五年(行ツ)第一七九号 上告人 寿流日舞詩舞の会)

上告代理人高澤正治、同古閑孝の上告理由

第一、本件に関する特許庁の認定について、

一、原審は本件について、特許庁の審判手続中上告人からも被上告人の本件商標登録申請が商標法第四条第一項第七号に該当する旨の主張が為されていないのに係わらず、右条項を理由として本件商標を無効とする旨認定した特許庁の判断は違法であり、原審決は取り消す旨判断している。

二、確かに上告人も上告の主張中、商標法第四条第一項第七号「被上告人の登録申請に係る商標が「公の秩序又は善良の風俗に反する」との文言を用いて主張していないことは原判決の云うとおりであるが、上告人の審判請求書、請求の理由(6)によれば被上告人が上告人から破門されているのに係わらず、しかも寿流日舞詩舞の会の会員中であったにも係わらず商標登録を出願し商標登録を得たものである。

従って、その経緯から不正競争の目的をもって商標登録を出願し、商標登録を得たことは明白である。

更に(7)において、上述のとおり本件商標登録は無効理由を有するのでと主張している。

つまり、上告人の主張の真意は被上告人の商標取得が不正なものであったと主張しているのと解されるとある。

三、これを特許庁の審決によれば、上告人の主張する経緯で取得された商標は上告人の長年に渡る努力と権威を無視するもので、上告人の「請求の趣旨および請求の理由並びに弁駁」の全趣旨に鑑みれば、上告人は本件商標が商標法第四条第一項第七号に違反して登録されたものであるとの主張もしていると解するのが相当といえるところ該法条は「公の秩序又は善良の風俗を害する商標は商標登録を受けることができない」旨を規定しており、その趣旨は、その構成自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものと見るのが相当と解される。

つまり特許庁としては、被上告人の不正は基本的に且つ道徳的に許せないとの立場を採ったもので、勿論特許庁の審理中双方が提出した書面や証拠により「書面審理に依った」特許庁の審理は敢えて被上告人に対する求意見の手続きを採るまでもなく書面上明らかであったと考えられるので原判決の云う手続きの欠缺はなかったと云う可きである。

第二、原審の審理不尽と原判決の誤りについて、

一、原判決は特許庁の審決における真意を見誤り、基本的には必要としない無効理由の主張が無かったとして特許庁の審決を取り消している。

原審が、その主張のような商標法第四条第一項第七号違反の無効事由の文言を必要とすると解するならば事件が原審継続中に、その点を明確にす可きであったと考えられる。

しかも前記のように特許庁の各審決は商標法第四条第一項第七号違反を適用す可き理由を具体的に示しているもので、この点において原判決の理由は不備である。

二、且つ、原判決は特許庁の審決に対する二審制の由来をもって判決理由とするが前述の如く特許庁においては充分に本件審理が為され、且つ各審判官が書面審理とは云え被上告人の意見も理解した上で審決を為しているもので、もし原審が特許庁における審理が不備であると解するならば、原審において、その不備の是正をするか又は、事件を特許庁に差し戻して特許庁の審判を再開するようにするのが本来であろう。

この点において、原審は審理不尽と判決の誤りがある。

破棄されるべきである。

以上

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